









全人類を熱狂させた「究極のユートピア」
ハイエクの厳しい自由、ケインズのきらびやかな魔法……これらを経て、最後に私たちが向き合わなければならないのは、経済学の歴史の中で最も過激で、最も美しく、そして最も恐ろしい物語です。その主役こそが、髭もじゃの革命家、カール・マルクスです。
皆さんに質問です。もし、「明日から働いても働かなくても、みんな同じだけのお金がもらえます。格差もなければ、上司に怒鳴られることもありません。すべてが平等で、平和な世界です」と言われたら、どう感じますか? おそらく、今の格差社会や厳しい競争に疲れ果てた人なら、一瞬だけ「それって天国じゃないか?」と思ってしまうはずです。
マルクスが19世紀に『資本論』を書き上げたとき、世界中の労働者たちは、その「甘い夢」に熱狂しました。当時の労働環境は今の比ではありませんでした。子供たちが工場で酷使され、資本家だけが贅沢を極める。そんな地獄のような現実を前に、マルクスは「資本主義はいつか壊れる。そして、労働者が主役の平等な理想郷がやってくるのだ!」と叫んだのです。彼の言葉は、虐げられていた人々の魂を揺さぶり、世界を真っ二つに引き裂くほどの大きな炎となりました。
「やる気」が消えた瞬間に、社会は止まる
しかし、ここで一つ冷静に考えてみましょう。マルクスの描いた「理想郷」には、人間の本質に関わる決定的な欠陥がありました。それは、**「人間のやる気(インセンティブ)」**というエンジンを完全に無視してしまったことです。
ちょっと想像してみてください。あなたが最高のラーメンを作ろうと、寝る間も惜しんでスープの研究をし、行列ができる店を作ったとします。でも、隣で一日中スマホをいじってあくびをしている店主と、もらえる給料が1円も変わらなかったらどうでしょう? あるいは、どんなに新しい発明をしても、その成果はすべて国に没収され、みんなで分け合うことになったら?
答えは明白ですよね。おそらく、あなたはスープの研究をやめ、スマホをいじり始めるでしょう。マルクスが夢見た「平等」の世界では、誰もが「頑張る理由」を失ってしまったのです。
ハイエクはこのことを鋭く批判していました。競争を悪だと決めつけ、無理やり平等を押し付けようとすれば、人々は創意工夫を忘れ、ただ「国からの配給」を待つだけの存在になってしまう。マルクスは「搾取のない社会」を作ろうとしましたが、その結果として出来上がったのは、**「誰も働かない、全員が等しく貧しい社会」**だったのです。
「平等」という名の独裁への招待状
さらに恐ろしいのは、この「平等」を実現するために、政府がどれほど巨大にならなければならなかったか、という点です。
みんなが平等に暮らし、必要なモノが完璧に行き渡るようにするためには、政府が「誰が、いつ、どこで、何を、どれだけ作るか」をすべて決めなければなりません。パンの値段から、誰がエンジニアになり、誰が農家になるかまで、すべてが国家の「計画」によって管理される世界です。
これこそが、ハイエクが警告した「究極の大きな政府」の姿でした。政府が経済のすべてを握るということは、人々の生活のすべてを握るということです。逆らう者は配給を止められ、自由な発言は「国家への反逆」として封じ込められる。マルクスの美しい理想を実現しようとしたソ連や東欧諸国が、なぜ例外なく「恐怖の独裁国家」へと変貌していったのか。それは、「完璧な平等」を維持するためには、「完璧な暴力」による支配が必要だったからに他なりません。
マルクスは、資本家による支配を終わらせようとしましたが、代わりに生み出したのは「官僚による無限の支配」でした。ハイエクが説いたように、自由な市場での競争は確かに厳しいものですが、少なくともそこには「自分の力で道を切り拓くチャンス」があります。しかし、マルクスの夢の中には、個人の意志が介在する余地は一ミリも残されていなかったのです。
格差の正体と、私たちの「武器」
現代の日本でも、「格差を是正しろ!」「もっと富裕層から税金を取って配れ!」という声がよく聞こえてきます。確かに、行き過ぎた格差は問題です。しかし、マルクスの失敗から私たちが学ぶべき教訓は、「結果の平等」を求めすぎると、社会全体のエネルギーが枯渇してしまうということです。
マルクスが否定した「競争」や「私有財産」こそが、実は私たちを豊かにする唯一の源泉です。誰かが「もっといい暮らしがしたい」「もっと便利なモノを作って稼ぎたい」と願うからこそ、新しい技術が生まれ、サービスが向上し、結果として全体の生活水準が上がっていく。ハイエクが愛した「小さな政府」の考え方は、決して弱者を見捨てるためのものではありません。むしろ、誰もが自分の才能を発揮し、価値を創造できるチャンスを最大化するための仕組みなのです。
マルクスの甘い夢は、歴史という冷徹な実験によって「悪夢」であったことが証明されました。それなのに、未だに「大きな政府」を求める声が絶えないのは、私たちが自由に伴う「責任」を恐れているからかもしれません。
読者の皆さん、もう一度、ハイエクの言葉を思い出してください。自由は、あなたに「自分の人生を自分で決める権利」を与えてくれます。それは、誰かに守られた平等よりも、ずっと過酷で、そしてずっと美しいものです。
さあ、いよいよ次は最終章です。ハイエク、ケインズ、マルクス。この3人の巨人たちの戦いを踏まえ、これからの日本を、そしてあなたの人生を劇的に変えるための「最終的な答え」を提示します。「小さな政府」こそが、なぜ私たちの未来を救う唯一の希望なのか。その核心に迫っていきましょう!



