恋の暗号~202x年7月、南太平洋上に新ムー大陸浮上!巨大津波から彼女を守る、未来の彼からのメッセージ【短編小説】

新城春奈は24歳、ただ今、就活中。
大卒後、不動産会社に入社したけど、胡麻をする人たちとの人間関係が合わず、半年で退社。
その後に入社した会社も上司とうまくいかず退社。

それから何社も面接試験を受けているが、ことごとく不採用で落ちてしまう。

春奈は気分転換のため、海辺の岩場に行ってそこに座り込み、太平洋の海を眺めていた。

ちょうど海を眺めているとき、書類審査中の会社から選考結果の案内がメールに届いた。
メールを開いて結果を見ると不採用だった。

ため息をつく春奈。

「再就職先も決まらないし、彼氏もいないし~。なんであたしの人生、こんなにつまらないんだろう」
春奈は恋の占いサイトを見て、いくつかの質問に答えて、恋愛運を占ってみた。
判定結果が出た。

判定は恋愛運「0点」だった。

「はあ〜恋愛運なしかあ。でも『0点』はないよね、ん?」
採点結果を見てため息をついたその時、恋愛サイトの広告欄に「予言コーナー」があることに気づいた。

「なになに、阪神大震災、東日本大震災を的中させたあの予言者が202✕年、7月、日本で大災難が起きると警告だって。ふっ、まさかね」

春奈はスマホを見るのをやめた。

再び春奈は、海の地平線を眺めていると、岩と岩の間にスマホが落ちていることに気づいた。

「あれ、こんなところにスマホが。きっと誰かが落としたんだ」

春奈は手を伸ばし、スマホを拾った。

春奈「あれ?このスマホ、確か、来月に発売するはずの新機種じゃないの?どうしてこんなところに?」

春奈は、不思議に思いつつ、交番に届けようと思い、立ち上がったその時、拾ったスマホから着信音がした。

春奈は恐る恐るスマホのメッセージを覗いてみた。

謎の男「君、春奈ちゃんだよね?」
春奈『えっ、なになに』

謎の男「よかった、俺のスマホ、見つけてくれたんだね」
春奈「あなた、誰なの?」

謎の男「私と海と電話」
春奈「はあ〜、まじめに答える気あるの?きちんと答えて!」

謎の男「春奈ちゃんの恋人(´∇`)」
春奈「わかったわ。あなた、ストーカーね。このスマホ、ここに置いておくから、後は勝手に取りに来て」

少し間をおいて再び着信が入った。

謎の男「今から1週間後、中国大陸で大洪水が起きる」
春奈「はあ? 何、わけのわからないこと言ってるの? もうあたし、帰るわ!」

謎の男「このメッセージ、必ず当たるから。それまでスマホ持ってて、一生のお願い(◍•ᴗ•◍)」

「ふう〜」

春奈はため息をつき、少し考えて答えた。

春奈「とりあえず、1週間だけ預かっておくわ。その後、警察に届けるから」

――1週間後の朝

春奈は朝、起きてテレビをつけると中国で大洪水が起きているというニュースを見た。

春奈『えっ、本当に当たっている…』

するとそのとき、預かっていたスマホに着信が入った。

謎の男「どう、ニュース見た?」
春奈「本当、当たったわね」

少しだけ、警戒心がほぐれた春奈。
謎の男「次は何を当てて欲しい?」

春奈「じゃあ、あたしの就職先を見つけてほしいな。再就職先が決まらなくてね。困ってるんだ」
謎の男「ああ、就職先ね。う~ん、そうだな。きっと旅行会社ならきっと採用されるよ」

春奈「本当? 旅行会社なら、1か月前、書類審査に応募したけど、ずっお返事なくてね。
とっくにあきらめてるよ」
謎の男「それってアールバス観光のこと?」

春奈「そうよ、なんで知ってるの?」
謎の男「大丈夫、きっと採用されるよ。他の就職活動は辞めてもいいから。じっと待ってなよ」

――3週間後

春奈は、書類審査・面接試験に合格し、採用が決まった。

春奈は拾ったスマホで彼にお礼メッセージを送った。
春奈「ありがとう。就職先が決まったよ。早速、来週からしてほしいって!」

謎の男「おめでとう」
春奈「ところで……、あなたは本当に何者?」

謎の男「私と海と電話(˶ᵔᗜᵔ˶)」
春奈「クスッ、これじゃあ、わからないよ」

謎の男「(≧▽≦)(≧▽≦)(≧▽≦)」
春奈「絵文字でごまかさないで( ఠ‿ఠ )」

謎の男「スマホは警察に届けず、しばらく持っててね」
春奈「わかったわ。でも、いろいろアドバイスくれて、本当にありがとう」

こうして、春奈は時折、彼とメッセージを交わすこととなる。

――3ヶ月が過ぎた。

春奈は研修期間を予定より早く終え、バスガイドの実務を任されるようになった。
もともと春奈は観光が好きで、体力もあり、コミュニケーション能力も高い方だった。

細かい書類仕事や営業ノルマに明け暮れるよりも、バスガイドの仕事は春奈に向いていた。

――ある日、春奈が会社の給湯室で休憩をとっているとき、2週間ぶりに、彼からメッセージが入った。

謎の男「3日後の7月×日、会社には絶対に行くな」
春奈「その日は急にスタッフが退職し、緊急のガイドを頼まれてね。どうしても休めないのよ」

謎の男「その日の正午過ぎ、大災難が日本を襲う。その日は絶対に海に近づかず、高いところに避難して」
春奈「はあ? 何言ってるの? その時間は、ちょうど峯ヶ崎海岸で観光客を案内しているところよ」

謎の男「絶対行くな! トンガの大噴火を皮切りに、南太平洋に新しい大陸が急浮上する。その影響で、日本の太平洋沖全域に巨大津波が襲ってくる」

春奈「君、少しくらい未来を当てることができるからって、大陸が急浮上するなんて馬鹿げた話、さすがに信じられる?」
謎の男「本当だ、行くな!」

春奈「予定よりずっと早く実務を任されるようになったのよ。私を信頼してくれた会社に迷惑はかけられないわ!」

*   *   *

結局、春奈は彼の必死の説得を受け入れませんでした。

――3日後

春奈は予定通り、仕事に出かけた。朝9時出発の観光バスに乗り、11時に峯ヶ崎海岸を見学し、お昼すぎには近くのリゾートホテルで昼食する予定だ。

今、時間は11時。バスは峯ヶ崎海岸の駐車場に到着した。

峯ヶ崎海岸のきれいな海辺を見るため、バスから観光客がぞろぞろと外に降りてきた。
ちょうどその時、彼からメッセージが入った。

謎の男「今すぐ、海から離れるんだ。近くにリゾートホテルがあるだろ。そのビルの5階から上は安全だ」
春奈「もう、いい加減にして! 本当に今、忙しいんだから!」

謎の男「間もなく、南太平洋沖を震源とした最大震度4の余震がくる」
春奈Ⅿ「え?」

謎の男「余震の20分後にマグニチュード10の大地震が日本を襲う。トンガの大噴火と同時に大陸が急浮上し、巨大津波が日本を襲う。俺を信じてほしい」

彼のメッセージを読んだ春奈は冷や汗をかいた。

…それから10分後。
春奈と観光客は、海辺に向かって歩こうとしたその瞬間だ。
その時、強い地震が起きた。春奈は、地震が収まった後、急いでバスに戻り、地震情報を聴いた。

ニュース「震源は南太平洋沖。マグニチュード7、最大震度4。津波の心配はありません」

ニュースでは、震源は日本よりはるか遠く、津波の心配はないとのことだ。
しかし春奈は、「震度4の余震がはじめに来る」という彼のメッセージが頭をよぎった。

春奈は急いで、会社の上司に連絡した。

春奈「安全確保のため、観光客を近くの高層ビルの近くに避難させます」
上司「しかしなあ、最大震度4だし、津波は来ないって言ってたしなあ」

春奈「先ほどの地震は太平洋沖とはいえ、マグニチュード7と大きい地震です。この後、津波が来ないとも限らないでしょう! ここは安全第一で考えるべきです。早く避難許可をください!」
上司「わかった。わかった。30分だけ様子を見よう。」

春奈は観光客に、急いでバスの中に戻るようにと案内した。バスは、近くのリゾートホテルに向かって走った。

バスがリゾートホテルの駐車場に着いたまさにその時、ついに超巨大地震が襲った。その地震は、あの東日本大震災をはるかに上回るマグイチュード10の超巨大地震だった。
大きな揺れは10分続いた。地震が収まった後、巨大大津波警報が出され、サイレンが鳴った。

なんと巨大地震の原因は、南太平洋でトンガの海底火山が大噴火を起こし、海面から巨大な大陸が浮上したことで起きた地震だった。
海から大陸が突如、浮上したことで南太平洋の海面がボコッと盛り上がり、その影響で巨大津波が発生した。その津波の大きさは、東日本大震災をはるかに超える大きなものだった。

春奈は、乗客をホテルに避難させる。
春奈「ホテル内に逃げてください。必ず5階以上に。急いで!早く!」

巨大津波がもう間近まで凄い勢いで迫ってくるのがホテルの窓から見えた。

春奈は、乗客全員をホテルの5階以上に誘導し、最後の確認でもう一度、1階に降りて駐車場を確認した。
…すると、駐車場でしゃがんでいる小さな子供がいることに気付いた。春奈は、急いで駐車場に向かい、小さな子どもを抱え、ホテル内に入り、階段で5階へ向かった。

しかし、階段を上り始めた頃には津波が到達し、ホテルの正面口や窓を破壊して水が一気に押し寄せてきた。

春奈は子供を抱えながら階段を走って登っていくが、水の浸水は想像以上に早かった。

4階に到着しようとしたが、とても間に合わない。その時、春奈を心配してかけつけてきたバスの運転手が4階に降りて待っていた。

運転手「新城さん、早くこっちへ!」
運転手は手を前に出し、子どもを春奈の代わって抱きかかえようとしていた。

それを見た春奈は、子どもをとっさに運転手に渡した。
春奈「麻生運転手、4階も水が来る、すぐに5階まで上がって!」
運転手「わかった!」

運転手は子供を抱え、急いで5階に上がっていった。運転手と子供は間一髪、助かった。

しかし、春奈は4階で力尽きてしまい、水に飲みこまれてしまった。

……春奈は今、夢を見ているようだ。

春奈は目を瞑り、あおむけに横たわっていた。春奈がゆっくり目を開けると、目の前に青年が立っていた。
しかし、その青年の顔の部分は蜃気楼がかかって見えなかった。

春奈「君は誰?」
謎の男「僕は、『私と海と電話』」

君の未来を知っている者。実はこの世に生まれてくる前、天上界で、君と結婚を約束して生まれてきたんだ」

春奈「生まれる前からの約束?」
謎の男「そう、君と一緒にゴールデンエイジを生きることを約束して生まれたんだ。しかし未来の世界では君は……、この大災難で亡くなったことを知ってね。どうしても助けたかったんだ」

春奈「あたしが大災難で死んでしまう……。幸せなゴールデンエイジが来るというのに、なぜ大災難が起きたの?」
謎の男「大災難は、生みの苦しみのようなもの。無神論や唯物論が跋扈し、神仏の声に耳を傾けず、傲慢になっている人類が心の価値に目覚め、本当の幸福な世界をつくるには、どうしても大災難は必要だったと神様は話していたよ」

春奈「そうなんだ。でも、なんで未来からあたしに連絡が取れるの?」
謎の男「未来の世界で僕は、君を生き返らせてほしいと、神様に真剣に祈った。そしたら、僕の体は奇跡的に2年前にタイムバックし、なぜかあの海辺の岩場で立っていた。でも君の姿がはるか遠くに見えた瞬間、僕の体は未来に逆戻りし、スマホだけが残されたんだ」

春奈「それが、あのスマホだったんだね」
謎の男「未来に戻った後、スマホがないことに気付いてね。パソコンでスマホにアクセスしたら、奇跡的に君が見つけていて、連絡が取れるようになった」

春奈「そんな奇跡みたいな話があるんだね」
謎の男「僕も驚いたよ。さすがに」

春奈「でも結局、あたし、津波に流されたんだよね。やはり、運命は変えられなかったんだね……」
謎の男「いや、きみは乗客全員を助け、子どもを助け、神様が奇跡を起こしてくれたよ。君は生きている」
春奈「ほんと? 夢でもそういってもらえると嬉しいよ。最後に、君の名前を教えてよ」

謎の男「名前は教えられないよ。本当は未来の人が過去の人に干渉してはならないからね。名前を教えないというのは、神様との約束だから」
春奈「クスッ、わかったわ。私と海と電話くん」

謎の男「今から2年後に君と会えるよ。その時まで、僕の暗号を解いてね」
春奈「2年後ね、私、待ってるよ」
謎の男「日本のゴールデンエイジ、一緒に幸せに生きようね」
春奈「うん……」

春奈は、目が覚めた。
春奈は病室のベッドで寝ていた。病室に会社の上司とバスの運転手がいる。

上司「目が覚めたかい?」
春奈「ここは?」
運転手「君が流された瞬間、乗客の一人がかけつけて君を掴み、間一髪、流されずに済んだんだ。そのあと、病院に運ばれ、1週間、ずっと眠っていたんだよ」
春奈「あたし、生きてるんだね、でも街は?日本は?」
上司「ああ、日本や東太平洋の国はもうひどい惨事だ。特に日本では大陸浮上に連動して富士山まで大爆発を起こし、大変なパニックとなっている。救助活動は今も続いているが、米軍を中心に世界中からボランティアや軍隊が救助に来ているよ」
運転手「世界は…日本は大丈夫かな?」

春奈はこのとき、彼が夢の中で「ゴールデンエイジが来る」と言ったことが脳裏に浮かんだ。
春奈「大丈夫、世界は立ち直りますよ。きっと……」

その後、会社の上司は、春奈の両親に電話し、意識が回復したことを伝えた。田舎の実家に住む両親も無事だった。

――大災難からちょうど2年後
春奈は今、彼のスマホを見つけたあの海岸にいる。
春奈は海の水平線を眺めている。2年前、海しか見えなかった水平線には、うっすらと新大陸が見える。
巨大地震で浮上してきた大陸は、「新・ムー大陸」と名付けられた。

この2年で、復興はだいぶ進んだ。今回の大災難では、独裁国家ほど大惨事を受けたが、神様を信じている国は不思議と被害が最小限に抑えられた。この大災難を機に、地球の人々は争いを止め、心の価値に目覚め始めたのだ。

今日は、大災難があった日からちょうど2年後である。
今、世界各地で国をあげて慰霊祭が行われている。
新しく浮上した新・ムー大陸は日本列島の一部とつながった。新・ムー大陸には草木が生え、アメリカや日本が中心となって大開発が始まろうとしている。

春奈は、水平線のはるか向こうに見える、新大陸を見つめながら、これから世界は街も心も復興していくんだと確信した。

しかし春奈は、今、ここで何をしているのだろう。
どうやら誰かを待っているようだ。

春奈ナレーション『彼と連絡をとっていたあのスマホは2年前の大災難の時になくしてしまいました。それ以来、彼とは連絡をとれなくなりました。しかし私は今、彼を待っています』

そのとき、後ろから声をかけてくる男性がいた。

謎の男「やあ」
春奈「あなたは?」
謎の男「はじめまして(笑)」
春奈は2年前、メッセージで私を救ってくれた彼だと本能で気づいた。

春奈「クスッ、はじめまして、私と海と電話くん!」 
謎の男「その暗号の意味、解けた?」
春奈「うん!」

春奈は最高の微笑みを浮かべながら、「私と海と電話」の意味について答えた。

春奈「あいしてる→I(アイ)・SEA(シー)・TEL(電話)」

2人はお互いに見つめ合い、クスッとほほ笑んだ。